2026年7月に成立した改正皇室典範をめぐり、再び大きな議論が起きています。
焦点となっているのは、「女性皇族の結婚後の身分保持」と「旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎える制度」、そして今回先送りされた女性天皇・女系天皇を含む皇位継承問題です。
さらに9月5日、高市早苗首相がXで、
「秋篠宮皇嗣殿下、次世代の悠仁親王殿下までの皇位継承は、これまでの儀式(立皇嗣の礼)や『皇室典範』により、既に確定しているということです」
との趣旨を投稿したことで、「本当に“確定”と言い切れるのか」という新たな論争も起きました。『女性自身』では皇室研究者の高森明勅氏が、この説明には論理的な問題があると指摘しています。
一方、AERA DIGITALでは、ノンフィクション作家の保阪正康氏が今回の改正について「歴史に逆行する」と批判し、愛子さまの皇位継承も視野に入れた、いわば皇室典範の「第3次改正」が必要だと提言しました。
いったい何が起きているのでしょうか。
そして今回の改正は、本当に「悠仁さままでの皇位継承を確定した法律」なのでしょうか。
- 2026年7月、皇室典範が本格改正
- 国民は「養子案」を本当に理解・支持しているのか
- 天皇陛下が語られた「国民の皆さんの理解」
- 保阪正康氏が訴えた「皇室典範の第3次改正」
- 天皇や皇族の意見を全く聞かずに制度を決めていいのか
- 高市首相の「既に確定」発言が波紋
- 「確定」と「ゆるがせにしてはならない」は矛盾する?
- 実は政府自身が「将来の議論を縛らない」と答弁
- 皇室典範を改正すれば「愛子天皇」は制度上可能になる
- 愛子さまを「どのような立場になるにせよ」育ててこられた両陛下
- 愛子さまへの支持が高い理由
- 悠仁さまも「制度の当事者」
- 女性天皇は日本史上「異例」ではない
- 本当の争点は「愛子さまか悠仁さまか」ではない
- 「第3次皇室典範改正」が次の焦点になる?
- まとめ 「皇位継承は確定」で議論を終わらせていいのか
2026年7月、皇室典範が本格改正
まず整理しておきたいのが、2026年7月17日に成立した改正皇室典範です。
今回の大きな柱は2つあります。
一つは、内親王・女王が一般男性と結婚した後も皇族の身分を保持できるようにすること。
もう一つは、旧宮家の男系男子を、一定の条件のもとで皇族の養子として迎えることです。
ただし、ここには非常に重要なポイントがあります。
養子となった男性本人には皇位継承資格がありません。
一方、その子孫については実方の系統によって皇族としての地位が決まり、現行の「男系男子」という皇位継承原則との関係から、その後に生まれる男系男子が皇位継承資格を持ち得る制度設計となっています。
つまり今回の改正は「皇族数を確保するだけ」と言いながら、将来の皇位継承にも影響し得る制度なのです。
ここが最大の争点の一つになっています。
国民は「養子案」を本当に理解・支持しているのか
今回の改正をめぐっては、世論との距離も無視できません。
社会調査研究センターが2026年7月18~19日に行った全国世論調査では、「旧宮家出身の男系男子を養子縁組で皇族とする」ことについて、
賛成25%、反対40%、わからない34%
という結果でした。
さらに「養子となった男性のもとに生まれた男子に皇位継承資格を認めること」についても、
賛成26%、反対41%、わからない33%
となっています。
一方、ANNの7月調査では養子案への賛成47%、反対34%という結果も出ており、調査によって数字にはかなり幅があります。
だからこそ重要なのは、特定の一つの数字だけで「国民は理解している」「理解していない」と断定するのではなく、制度への理解や評価がまだ十分固まっていないと見ることでしょう。
対照的に、女性天皇をめぐっては、かなり明確な傾向があります。
社会調査研究センターの6月調査では、「女性天皇・女系天皇とも賛成」が40%、「女性天皇は賛成だが女系天皇には反対」が33%で、少なくとも女性天皇そのものに賛成する回答は合計73%でした。
ANNの7月調査でも、女性天皇・女系天皇の議論を今後行う必要があるとの回答は7割に達しています。
ここに、現在の政治と世論の大きなズレが見えてきます。
天皇陛下が語られた「国民の皆さんの理解」
さらに注目されたのが、天皇陛下のお言葉です。
2026年6月11日、オランダ・ベルギー訪問を前に行われた記者会見で、陛下は皇族数確保の議論について、
「制度に関わる事項については、私から言及することは控えたい」
とされたうえで、
「国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」
と述べられました。
もちろん、この発言を「養子案への反対表明だった」と断定することはできません。
天皇は憲法上、政治的な立場を表明する存在ではなく、陛下自身も制度への具体的な言及を明確に控えています。
それでも、「国民の理解」という言葉をあえて使われたことが注目されたのは当然でしょう。
皇室制度は政治家だけの問題ではありません。
実際にその制度の中で人生を送る皇族方がおり、同時に憲法第1条は天皇の地位について「日本国民の総意に基く」と定めています。
保阪正康氏が訴えた「皇室典範の第3次改正」
そんな中、AERA DIGITALが10月3日に掲載したインタビューで、保阪正康氏がかなり踏み込んだ問題提起をしています。
保阪氏の問題意識は、単純に「男系男子か女性天皇か」という話だけではありません。
現在の皇室典範そのものを、象徴天皇制に合う形に根本から作り直す必要があるのではないか、というものです。
明治22年、1889年に旧皇室典範が制定されました。
そして戦後の1947年、現在の皇室典範が制定されています。
ところが保阪氏は、象徴天皇制になったにもかかわらず「男系男子」「終身在位」といった明治以来の原則が残された点を問題視しています。
実際、その矛盾が表面化した代表的な出来事が、上皇さまの退位でした。
2016年、当時の天皇陛下がビデオメッセージでお気持ちを示され、その後、特例法によって退位が実現しました。
しかし制度そのものを恒久的な退位制度に変更したわけではありません。
つまり、その時々に特例や部分改正で対応するのではなく、象徴天皇制とは何なのかを根本から考え直すべきだ、というのが「第3次改正」という考え方なのです。
天皇や皇族の意見を全く聞かずに制度を決めていいのか
保阪氏がさらに問題視しているのが、制度の当事者である天皇や皇族の考えを政治がどう扱うかという点です。
天皇には政治的権能がありません。
そのため皇位継承や皇室制度について「私はこうしてほしい」と直接発言することは極めて難しい立場です。
だからこそ、「国民の理解」といった慎重な表現から、その背景を考えなければならないというわけです。
もちろん、皇族の希望だけで法律を決めることもできません。
しかし、当事者の意見を聞くことと、その意見に政治が全面的に従うことは全く別問題です。
まず話を聞き、そのうえで国民に情報を示し、国会で議論する。
その手続き自体が必要なのではないでしょうか。
高市首相の「既に確定」発言が波紋
そして現在、もう一つ大きな論争になっているのが高市首相の発信です。
高市首相は9月5日のXで、秋篠宮さま、悠仁さままでの皇位継承について「既に確定している」という趣旨を説明しました。
根拠として挙げたのが、2020年の「立皇嗣の礼」と皇室典範です。
しかし、この説明には反論があります。
『女性自身』で高森明勅氏は、立皇嗣の礼は秋篠宮さまが「現在の皇位継承順位第1位の皇嗣」であることを示したものであって、「将来必ず即位することを法的に固定したものではない」と指摘しています。
そして何より、皇室典範は法律です。
現行の皇室典範第1条には、
「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」
と定められています。
しかし法律である以上、国会が将来改正することは可能です。
実際、2026年にはこれまで認められていなかった皇族による養子縁組を可能にする改正が行われました。
その意味で、「現行法上の皇位継承順位」と「未来にわたって変更不能な確定事項」は同じではありません。
「確定」と「ゆるがせにしてはならない」は矛盾する?
さらに興味深いのが、高市首相側が繰り返している、
「悠仁親王殿下までの皇位継承の流れをゆるがせにしてはならない」
という説明です。
7月27日の首相官邸の書面回答でも、高市首相は2021年の有識者会議報告を引用し、この考えを政府として尊重するとしています。
ところが高森氏は、ここに論理的な問題があると指摘します。
「既に確定している」というのは、変更できない客観的な状態を意味します。
一方、「ゆるがせにしてはならない」は、「変更するべきではない」という価値判断です。
変更できないのであれば、そもそも「変更してはならない」と訴える必要はありません。
このため高森氏は、二つの説明には論理的な矛盾があるとしています。
ネット上で高市首相の日本語表現を疑問視する声が出る背景も、単なる言葉尻ではなく、この「確定」と「維持すべき」の違いにあるといえそうです。
実は政府自身が「将来の議論を縛らない」と答弁
さらに重要なのが国会答弁です。
2026年7月の国会審議では、政府側が今回の改正について、将来の皇位継承制度の議論を先取りしたり、縛ったりする趣旨ではないと明確に説明しています。
木原官房長官も、女性天皇・女系天皇を認める方向へ将来議論が進む可能性について、附帯決議を尊重する姿勢を示しました。
高市首相自身も7月17日の会見では、今回の改正について皇族数確保のためのものとして説明しています。
自民党も成立時、「皇位継承は先送りされており、今後の国会における意見・議論を尊重する」という高市首相の発言を紹介しています。
これを踏まえると、
「悠仁さままで現行制度上の継承順位が定まっている」
という説明と、
「今後どんな法改正が行われても悠仁さままでの即位が法的に確定している」
という説明は分けて考えなければなりません。
後者まで言い切るのは難しいでしょう。
皇室典範を改正すれば「愛子天皇」は制度上可能になる
現在の制度では愛子さまに皇位継承資格はありません。
理由は愛子さまご本人の資質や人気ではなく、皇室典範第1条が「男系の男子」に限定しているからです。
逆に言えば、この条文を改正して女性天皇を認めれば状況は変わります。
さらに男女を問わず直系の長子を優先する「直系長子継承」を導入するのであれば、愛子さまが皇位継承順位の最上位となる制度設計も可能です。
これは「現在そうなっている」という意味ではありません。
国会がそうした制度へ皇室典範を改正すれば可能になる、という意味です。
保阪氏も「男系男子か女性天皇か」という二者択一より、第一子が性別に関係なく継承する長子継承を検討すべきだとの考えを示しています。
愛子さまを「どのような立場になるにせよ」育ててこられた両陛下
今回の天皇陛下の記者会見には、もう一つ注目すべき発言がありました。
陛下は、ご自身が上皇ご夫妻のもとで育ち、両親のなさることを身近で見ることができた経験について語ったうえで、愛子さまについても、
「一緒にいろんなことをすることによって、愛子にもいろんなことを教えていきたい」
と述べられています。
実際、愛子さまは両陛下とともに被災地訪問や戦没者慰霊など、さまざまな機会を経験されています。
また2025年には初の海外公務としてラオスを訪問され、陛下も今回の会見で「本人にとっても大変貴重な経験になったのではないか」と述べられました。
こうした姿から、「将来どのような立場になるとしても、象徴皇室の役割を身近で学ばせてきたのではないか」と見る向きがあるのも不思議ではありません。
愛子さまへの支持が高い理由
愛子さまをめぐる議論で忘れてはいけないのは、単なる「人気投票」で皇位継承を決めることはできないという点です。
一方で、象徴天皇制が「国民の総意」に基づく制度である以上、国民世論を完全に無視することもできないでしょう。
2024年の共同通信調査では女性天皇への賛成が90%、女系天皇への賛成も84%だったと報じられています。2026年の複数調査でも、女性天皇容認や少なくとも議論を求める回答が多数を占めています。
愛子さまが各地を訪問された際の歓迎ぶりが大きく報じられることも多く、その存在感が「女性天皇論」と結び付いて語られる状況は今後も続きそうです。
ただし、愛子さま人気と、悠仁さま個人への評価を単純に競わせるような議論には注意が必要です。
皇位継承制度を決めているのは皇族本人ではなく政治だからです。
制度上の問題を、愛子さまと悠仁さまの「人気競争」にしてしまえば、本来政治が負うべき責任が見えなくなってしまいます。
悠仁さまも「制度の当事者」
これは悠仁さまについても同じです。
「次世代で唯一の男性皇族だから」という理由だけで、本人の意思とは無関係に将来の役割を当然視することが本当に望ましいのか。
ここも皇室制度を考えるうえで避けて通れない問題です。
秋篠宮さまもこれまで、お子さまたちについて親として幸せに歩んでほしいという趣旨を語られています。
皇族であっても一人の人間です。
だからこそ、愛子さまを支持する人も悠仁さまを支持する人も、本人への攻撃ではなく「どんな制度が本人と国民双方にとって持続可能なのか」を議論する必要があります。
女性天皇は日本史上「異例」ではない
「女性天皇は伝統に反する」との説明もよく見かけます。
しかし、日本では歴史上、推古天皇、皇極天皇、持統天皇、元明天皇、元正天皇、孝謙天皇、明正天皇、後桜町天皇など、複数の女性天皇が存在しました。
つまり「女性が天皇になった前例がない」ということではありません。
現在の皇室典範で皇位継承を男系男子だけに限定しているのは、現行制度上のルールです。
『女性自身』でも、2002年に高松宮妃喜久子さまが『婦人公論』への寄稿で、女性皇族が第127代天皇として即位することについて、長い日本の歴史から見て不自然ではないとの考えを示したことが改めて紹介されています。
現在の天皇陛下が第126代ですから、この発言が当時大きな意味を持ったことは間違いありません。
本当の争点は「愛子さまか悠仁さまか」ではない
今回の問題は、つい「愛子天皇か、悠仁天皇か」という対立構図で語られがちです。
しかし保阪氏の問題提起をたどると、本質はもっと深いところにあります。
それは、
「現代の象徴天皇制にふさわしい皇室典範になっているのか」
という問題です。
男系男子だけを維持するのか。
女性天皇を認めるのか。
女系天皇まで認めるのか。
直系長子継承にするのか。
退位制度を恒久化するのか。
皇族本人の意思を制度決定の過程でどこまで聞くのか。
そして、皇室と国民の関係をどうつくっていくのか。
一つ一つを切り離すのではなく、皇室典範全体を見直す必要があるのではないか、というわけです。
「第3次皇室典範改正」が次の焦点になる?
今回の改正で皇室典範の議論が終わったわけではありません。
むしろ始まったと見るべきでしょう。
なぜなら国会審議の段階から、今回の改正が将来の皇位継承議論を縛るものではないことが確認されているからです。
さらに世論調査では女性天皇を容認、あるいは少なくとも議論すべきだという回答が多数を占めています。
そして天皇陛下は「国民の皆さんの理解が得られるものとなること」を望むと述べられました。
ここを政治がどう受け止めるか。
養子制度を成立させたことで皇族数問題に「答えが出た」とするのか。
それとも、女性・女系天皇や直系長子継承まで含めた、本格的な皇室典範の再改正へ進むのか。
2026年後半から今後数年にかけて、皇室をめぐる最大の政治テーマになる可能性があります。
まとめ 「皇位継承は確定」で議論を終わらせていいのか
高市首相は「悠仁親王殿下までの皇位継承は既に確定している」と説明しました。
しかし一方で政府は、「皇位継承の流れをゆるがせにしてはならない」とも説明しています。
さらに国会では、今回の改正が将来の皇位継承制度の変更を縛るものではないとも確認されています。
ここには少なくとも、国民に分かりにくい説明上のねじれがあります。
そして皇室典範そのものが国会で改正可能な法律である以上、現在の継承順位と、未来永劫変えられない「確定事項」を同一視することはできません。
愛子さまが天皇になる制度も、悠仁さままで現行の男系男子継承を維持する制度も、最終的には政治がどの皇室典範を選択するかによって決まります。
だからこそ必要なのは、皇族個人への好き嫌いや誹謗中傷ではなく、
「これからの象徴天皇制をどうするのか」
という議論ではないでしょうか。
天皇陛下が語られた「国民の皆さんの理解」という言葉。
そして保阪正康氏が訴えた「第3次改正」。
女性天皇への支持が高い現在の世論。
これらを考えると、2026年7月の改正で皇室典範問題に決着がついたとは到底言えそうにありません。
むしろ次に問われるのは、愛子さまも含めた皇位継承を正面から議論することなのかもしれません。

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